デクスター・ゴードン    最後の映画「レナードの朝Awakenings(1990)」つながりで         ランディ・ニューマン   

デックスの死後公開された最後の映画は、嗜眠性脳炎患者にパーキンソン病要の薬を応用して目覚めさせる実際の試みを医療フィクションものに仕立てた「レナードの朝」で、役はミュージシャンのロランド。医師役はロビン・ウィリアムズ(注)で、ランディ・ニューマンが音楽担当。病院に父親を見舞いに来ていたポーラが好きになり、レナードが勇気を出してポーラに心のうちを打ち明け、彼女の手を取ってダンスをするシーンで流れるDexter’s Tune という死ぬほど美しい曲がある。これはランディ・ニューマンのソングブックvol 1のオープナーIt’s Lonely At The Topのイントロとして使われているけど。

ランディ・ニューマン(1943~)はLA生まれのシンガー・ソングライター。70年代からイーグルズ、ジャクソン・ブラウンらと親交がある、この人もミュージシャンズ・ミュージシャン。最近は一家の伝統芸?(伯父、叔父が映画音楽の大作曲家)である映画音楽中心に活動していて、トイ・ストーリーの「君はともだち」なんかも文句なしの名作。

ぼくは1980年にBorn Again(カバーが目がグリーン$$のいで立ちのランド(と仲間内では呼ばれるので、ぼくもそう呼ばせていただくとして)がバンクランプのあるデスクで執務している。デスクに飾ってある家族の写真にも妻・子供2人全員の目がグリーン$$になっている!)を買って、しょっぱなのMoney That I Loveの強烈なアイロニーにまず参り、Ghostsの静謐で美しい虚無に参り、以来ずっとファン。

映画音楽というのは、視覚と聴覚と記憶と想像力を、刺激するものなのだろうし、そういう視点でランドはものすごくエモーショナルな作品を作る天才。彼のウィットが聴いた皮肉は英国人にはさらに受けると見えて結構英国に仕事に行っていて、2008年のツアーでロンドン東部にあるロンドン交響楽団のセント・ルークス(18世紀の教会を音楽ホールに改装)で行われたLive in Londonでもお客さんを大いに笑わせている。このスモールライブでも演奏したが、The Guardian 紙の日曜版Observerの企画How I Wrote(「名作のいきさつ」シリーズでしょうか)に呼ばれて夜行便で会場に着き、あー声がガラガラだよ、よれよれの表情だよなー、などといらついて、メーク担当に頬紅塗ってよ、まだ昼前だから雰囲気でないな、シャブはないの?などと回りを大笑いさせて、ピアノに向かって、この曲。ランドの腫瘍内科医の弟アランAlanから23歳のアメフトのスターが脳腫瘍で治療の甲斐なくあっという間に天に召されたことを聞いて作った曲なんだって。人はある年齢になってからは乗り越えられない悲しみというのがあるって、演奏前に話しかけます。泣けます。

(注)2014年にうつ病で自死したと報道されていたが、つい3か月くらい前に夫人のスーザンさんが、うつ病が主原因ではなくレビー小体型認知症への闘いの結果の自死だと明かした。この映画とロビンの死に因縁めいたものを感じる。

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