ブルックリンを散歩して、ブルックリン・ビールを飲んだ!

先週は3年ぶりにニューヨークに滞在した。内部監査の国際大会に出て、2日間は前から行ってみたかったブルックリンを歩いてみた。

ぼくが住んでいた1980年代後半は、アメリカ経済がどん底だった時代。日本人だとわかるとろくなことはないというのが大っぴらには言われないが身を守る智恵、先輩駐在員からは面倒なことに巻き込まれるリスクが場所・時間によってものすごく変化する、その辺の感覚を身につけろと言われたものだった。その点、ブルックリンはブロンクスと並んで常時一人で足を踏み入れてはいけない場所だった。実際ぼく自身、最初にしばらく住んだクイーンズのフォレスト・ヒルズでは、夏の朝5時頃にジョギングして、街角でたむろしていた3人組に、難癖つけられて追いかけられたことがある。必死に走って逃げたので(幸いというか、相手は酒が入っていたから、スピードはそれほどではなかった)事なきを得た。いや、怖かった。

で、30年後、車でしか、かつスタテン・アイランドに遊びに行ったときなど数回しか通ったことのないブルックリン・クイーンズ・エクスプレスウェー(BQE)からの風景ではなく、地下鉄で主要なスポットになっている地域の駅から、まちを、お店を歩いて見て、BQEのすぐ横の下道(したみち)マーシー・アヴェニューも歩いてみた。もともとマンハッタン南部のダウンタウンとブルックリンはホントに目と鼻の先で、地下鉄の2ライン、3ラインのウォール・ストリートの次の駅がブルックリンのクラーク・ストリート。この間2分。世界の富の中心のウォール街からイースト・リバーを渡って隣の町がもうブルックリンなんだよね。なんか新鮮な感じ。

ブルックリンの地図で分かりやすいのはないかなと探したら、これなんかがいいかなと思います。この中のブルックリンの地図。

brooklyn_map

結論から言えば、昔に比べて格段にまちが新しく、きれいになって、ショコラティエや一本200ドルのジーンズを売っているショップやら、サンスイの70年代の名機を展示しているオーディオ店やら、ベドフォード・アヴェニュー駅(地下鉄Lトレイン)を中心としたウィリアムズバーグ地区は日中は大丈夫かな。(上の地図のJMZという地下鉄マークのあるあたり)マンハッタンのダウンタウン対岸の昔から高級住宅地だったブルックリン・ハイツ(2トレインか3トレインのクラーク・ストリート駅やAトレインかCトレインのハイ・ストリート駅でアクセス。上の地図の37のマークあたり)も州の裁判所の建物があるあたりを通ってさらに南のスミス・ストリートをベルゲン・ストリートあたりまで歩いてみたが、ここら辺も日中は大丈夫。昔はクイーンズ中心地のフォレスト・ヒルズあたりでも、日中に大丈夫かなと思って歩いていると、突然街並みが荒れてきて、ジャンキーっぽい人間が公園のベンチにへたり込んでいる、という感じだった。ブルックリンはもともとアイリッシュやポーランドやギリシャの移民の町だったところで、今でもそういうルーツの音楽をやっているカフェがあったりして、夜に行ってみようかなと思ったが、滞在中毎日(!)朝のニュースでブルックリンのどこそこで昨夜殺人がありました、強盗がありました、強姦がありましたと放送しているくらいに依然として夜は危ない町なので、やめました。

それが現実。

ウィリアムズバーグのMikey’s Hook-upにて

Mikey's Hook-up

上段のサンスイの名機AU999が895ドル、下の方のヤマハCA610 IIが645ドル。開店15周年のセール中でした。

さて、もう一つ。ブルックリンといえば、ビールでしょ。

ホテルに投宿する前に、コンビニでビールを仕入れよと思い、近くのDuane Readeドゥエイン・リードに寄ったら、ブルックリン・ビール4種×3本の1ダースセットが20ドル弱で売っていたので買ってタクシーで移動。なお、ニューヨークではドラッグストア業態が品揃えを食料、パーソナルケア用品などにも拡大して日本のコンビニに相当するものになっている。Duane Reade、Rite Aid, CVS/ファーマシーは80年代からあったが、その後ウォルマート系列のWalgreen(Duane Readeを2010年に買収)が店舗を増やしている感じ。

買ったのはこれ、ブルックリン・ボックス・セット。IPA(インディア・ペール・エール)という少しアルコール度の高い種類のビールでホップの風味が強く、ガッツリ味わいがある。ぼく的には緑のラベルのブルックリン・ラガーがバランスがよく飽きがこないので好き、赤いラベルのブルックリン・ディフェンダーは西海岸系のストロングな味でこれもいい。メキシカン料理などにマッチするはず。楽天でも売っていますね。でも値段は6本で2500円。倍以上するね。

BrooklynBeer

 

PokemonGO騒ぎにちょっとコメント

PokemonGOの騒ぎが一段落したのかと思う。

先週ニューヨークに行っていて、久しぶりのメモワールの題材として、当初は考えていなかったけれど当地でもニュースになっていたので、ちょっと書きます。

この超モンスタータイトルのおかげで、「ソシャゲ」(ソーシャル・ゲーム)が一気に沈むことに危機感を感じた(従来のモバゲーなんかからの広告収入が一気に細ってしまう)テレビ業界がネガティブ・キャンペーンを繰り広げたという観測がある。靖国神社でプレイしている人たち、それも外国人が多くいることについての懸念や、しまいには不特定多数が集まる場所はすべてゲーム開発段階からポケモンが現れる場所にしてはいけない、という議論も巻き起こっている。任天堂は7月22日、PokemonGoに係る業績の影響は「ない」と発表したため、ストップ安。7月7日終値14935円から1週間で25,000円、19日ザラバ高値32,700円まで高騰したが、今日も前日比5%を超える安値。

任天堂は権利保有会社のポケモンに32%出資しているだけで持分法適用子会社として応分のライセンス料などを開発会社の米国ナイアンティックからもらえるだけだ。有価証券報告書など開示資料を見ればわかることだけれど、期待だけでこんなに株価が上がってしまったのだろうか?1週間で時価総額が1兆4000億円増えた。個人投資家の中にナイーブな人たちがいたかもしれないが、全体としての動きからはこれは考えにくい。米国で大ヒットしていると爆謄させるネタをばらまいておいて、任天堂決算発表(7月27日)の前に任天堂自身が「業績に影響ない」「今期(2017年3月期)も最終利益350億円に変更なし」とわざわざ発表させ、一転して売り浴びせて「いじくっている」機関投資家の姿が浮かんでくるような気がしますが。米国内での報道にも、「投資家は任天堂がPokemonGoの開発をしたのではないことに気づき、株価は急落」[1]というのもあるにはあるが。

PokemonGoについて以下のような記事も注目。

  • アップルが米メディアに対し、世界数十カ国で公開済みのゲームPokemon GOの最初の1週間のダウンロード数がApp Store開設以来の過去最高だったと認めた。[2]
  • プラットフォーム(TVゲームの場合はゲーム機そのもの。任天堂、セガ、ソニー3強時代はそれぞれのゲーム機で遊べるゲームタイトルの人気が勝敗を分けた。現在はスマホで遊べるゲームが主体なので、アップル、アンドロイドがプラットフォーム)を持つ強みが如何なく発揮される。バロンズ誌によれば、ローンチ10日での市場浸透は2100万人(3億2000万人の米国人口の6%)に達しており、経験則から市場飽和が20%、1人1日当たり5セントを消費するとして今後2年間に30億ドルの収益をもたらすものと予想。[3]

この2つ目の記事にはPokemonGO以前の最大のモバゲータイトル「キャンディクラッシュ」は2013年と2014年のコンバージョン・レートが2%だったとしている。コンバージョン・レートとは課金に移行するプレーヤーの割合。通常は人気タイトルでもこのくらいだったのがその10倍の20%とはただただ強烈。フォーチュン誌によると、アップルのiTunesなどデジタル・ダウンロード収入は2013年で160億ドルを超えているとのこと。[4] アップルは音楽ストリーミングサービス収入がデジタル・ダウンロードを昨年初めて上回ったそうで、その他(従来のMacだとかiPhoneだとかのハードを作っている部門など)の3つが1/3ずつで、この2年ばかりは四半期合計500億~770億ドル位を稼いでいる姿になっている。

3億2000万人の2割の6400万人が時期はちょっとずつずれていくにしても、上記の予想の2年間ずーっとお金払って遊んでくれるヘビーなユーザー、ちょっとやって3か月くらいで飽きちゃうユーザー、その中間くらいの人たちなどなどの経験則に基づいたアサンプションで収益予測をしているはずだからあんまり狂うことはないのだろうと思う。

アップルのCEOティム・クックも笑いが止まらない様子で、昨日の決算発表では、「ポーケマン」とPokemonの「正しい」発音ができず、(ゲームなど若者の文化に疎い)オヤジみたいだと揶揄されていたようだが、[5] この拡張現実(AR)のゲームは信じられらないほどの現象となっていて、アップルは今後もこの分野(デジタルダウンロード)に投資をしていく、としている。拡張現実について、再確認したかったので元ソニーのエンジニアが立ち上げたVR仮想現実技術の会社のウェブをのぞいてみた。

AR(Augmented Reality:拡張現実)とは、「拡張」という言葉が指す通り、現実世界で人が感知できる情報に、「何か別の情報」を加え現実を「拡張」表現する技術やその手法。

他方でVR(Virtual Reality:仮想現実)については、「バーチャル(仮想)」も含めたあらゆる空間表現を、「まるで現実(リアリティ)であるかのように」体験するための技術や取り組みの総称だと。ARとの大きな違いは、「ARが現実世界をベースに、追加情報を付加」するのに対して、「VR(バーチャルリアリティ)は、様々な形で作られた現実のような世界」に、「ユーザ自身が飛び込む」という部分にある、という

ARもVRも人間の認知能力を支援したり刺激したりする重要な役目を果たすものであることはわかるだろう。日々人間は自分の五感で感知する情報(朝起きて、窓の外の天気の具合を見て、ニュースを見て、シャワーを浴び体調をチェックして・・・)をもとに、行動する。認知症や自閉症にもこの分野の技術が予防や治療に役立たせることができるはずである。「ポケモンGOは自閉症に好影響?」という記事を参考までに。

山歩きにARの利用はどうなのかな。今すでに利用されているGPSルートガイドにプラスして何らかの「情報」が価値あるものとなるとすると何か?ライチョウだ、コマクサの群生だ、というような「実際にそこまで行って、そこに実際にある(べき)もの」を体験できることが通常の山歩きの楽しみである場合が多いから、また、プロの山歩きの人は結構自分だけの秘密の場所(マツタケが採れる場所などは特に!)を教えない人も多いから、喜びの源泉となるものは共有されないと考えた方がいいかも。だから、ARは危険個所のデータを山歩き中に気象情報とリンクしてリアルタイムで警報を鳴らすなどの利用がお金が採れるビジネスモデルになるかどうか。でも危険かどうか自分の頭で判断できないようになるのは、逆に恐ろしいことではある。

[1] https://techcrunch.com/2016/07/25/investors-realize-nintendo-didnt-develop-pokemon-go-and-shares-plummet/

[2] https://techcrunch.com/2016/07/22/apple-says-pokemon-go-is-the-most-downloaded-app-in-its-first-week-ever/?ncid=rss

[3] http://blogs.barrons.com/techtraderdaily/2016/07/20/pokemon-go-could-add-3b-to-apples-revenues-needham/

[4] http://fortune.com/2014/04/20/how-much-revenue-did-itunes-generate-for-apple-last-quarter-2/

[5] http://www.marketwatch.com/story/tim-cook-pronounces-pokemon-like-a-dad-but-sees-possibilities-for-apple-2016-07-26