ジャズ喫茶や音楽雑誌が情報を得る場だったことは昔からそうだったと思うけど、あるミュージシャンについて、「母国や海外でツアーでの評判は、次のアルバムは」的な情報は、そもそも海外ミュージシャン(「外タレ」という言葉は1980年代までは外国から日本市場にやってきてコンサート等を行う外国人ミュージシャンを指していただが、現在は「主に日本国内でのみ芸能活動を行っている外国人のタレント」を指すものとなっている(注)。前者の意味での「外タレ」は死語。)について、日本のメディアが報じることはまずないので、またプリントメディアで仮にカバーするとしても1か月2か月後になるので、豊かな音楽人生を歩むためには(!)、早く情報を入手できる自前の手段を持つ必要がある。現在ではこうした手段は基本的にはweb上に提示されているものから、自分で取捨選択でき、有料・無料の情報提供サービスを受けることができる。
メルマガ登録をしておいた英UNCUT誌の今日のトップニュースは、ニール・ヤングのファンとしてはかなりの(!)ニュースだったので紹介する。当然ながら(!)は「驚き」。この驚きには「ファン」であることの立ち位置や理解によっていろんな内容が入るかもしれないけどね。
ニールが前作「ザ・モンサント・イヤーズ」で起用したプロミス・オブ・ザ・リアル(ウィリー・ネルソンの息子たちが在籍するユニット)と共に、パリで投信運用会社カルミニャックCarmignac Gestionのための「プライベート・ショー」を開催。セットリストには曲は発表されてから46年間演奏されていなかったTill the Morning Comes、1997年以来の4回目の演奏となるCripple Creek Ferryを披露した、というもの。どちらもAfter the Gold Rush(1970)のA面とB面それぞれのラスト・チューンで、この2曲をメドレーで演奏している。あれ、Creepleというミススペルになってるけど。
UNCUTはカルミニャックは2012年10月にも同様のプライベート・ショーをローリング・ストーンズを招いて行った実績がある、と伝えている。ぼく的にはもちろん驚きは、うれしい驚き。この懐かしい曲をこれだけの長い間演奏していなかったことは知らなかった。
でも、遺伝子組み換え作物の種子や農薬の販売大手であるモンサントに反対する立場をとるニールとカルミニャックの投資ポートフォリオや投資姿勢にコンフリクトがあったりしないのかなあ、と思ってカルミニャックのサイトを一応チェックしてみた。個々のファンドに組み込まれている個別銘柄までは当然わからないけれど、当然このレベルの投信運用会社なら環境・社会・ガバナンス(ESG)問題に配慮することにより、社会的責任を果たすことを基本精神とする国連の「責任投資原則」Principles of Responsible Investmentを守る機関であると公表している。外部機関(MSCI)のESG指標を用いて客観的に投資基準に合った対象を選んでいますよ、としているから、ま、問題ないでしょう。(ちなみに、日本では昨年に同様の機関投資家向けの行動原則「日本版スチュワードシップ・コード」が導入されているけれど、ESGへの視点までは含んでいない。日本的には「一気にハードル」を上げると「調和を乱す」ので、みたいな気配りや暗黙の了解とかがありますね。)
それにしてもストーンズとニール・ヤングか。いいセンスしてます。パリ本拠で運用資産500億ユーロ(約7兆円)。1989年創業。創業者かつ総帥はエドゥアール・カルミニャックEdouard Carmignac (1947~)、コロンビア大MBA(1970)で米国の証券会社で働いていた経験あり。多分この頃だねニール・ヤングを聴き始めたのは。息子のシャルリCharlyはフランスのMoriartyというバンドでギターを弾いてるそうだし。自分のバンドーム広場のオフィスにはアンディ・ウォーホールの毛沢東とレーニンの肖像画が飾ってあるんだって。(出所)
Wiki情報によれば、カルミニャックは社会党オランド政権に対して、富裕層への課税は国を破壊するとして公に批判しているそうだから、そういう「富裕層」の利害を体現する立場の会社である。当たり前だけど。でも、毛沢東とレーニンはあの世でカルミニャックをどう思って見てるのかなあ。